「最新現場レポート」
今回の現場ルポは今話題の「中部新国際空港」に10月某日快晴の中、中配協理事3名事務局1名にて胸ワクワクしながら訪問しました…。
中部新国際空港の「エネルギーセンター」建設工事に携わる新菱冷熱工業株式会社 統括所長である岡田孝光氏をお尋ねしご多忙中にも関わらずお話をお伺いすることができました。
まず始めに、空港島へ渡る前に新菱冷熱工業㈱現場事務所へお邪魔し「エネルギーセンター」の工事概要や工事に携わった中でのお話をお聞きしました。
中部新国際空港エネルギーセンター
1. 事業の経緯 平成14年5月 エネルギーセンター建設工事着工(施工者:新菱冷熱工業㈱)
6月 熱供給事業許可
7月 地域導管工事着工(施工者:JFEエンジニアリング㈱)
平成16年3月 試運転開始予定
10月 開業予定
2.システム計画
3.エネルギー設備概要
その中で印象に残った話として
「今は車で入れるけど、船で渡っているときが一番大変でした。」「海風の管理が大変です。波が高いとフェリーは運行されないし、風速10m以上になるとクレーン作業は中止されます。」
夏がやっと過ぎ行くこの時期だったので「夏は暑さで大変だったのでは?」とお聞きすると、「水が無いのが一番困りました。冷水器と塩で熱中症対策をしましたが、冬の寒さの方が大変でしたよ。」との返答。ここで何ヶ月もの作業に従事してこられての重みのある感想だと思いました。
「特殊な現場ではあるけれど、【3ヶ月前の工程・3週間前の資材・3日前の人員】の確認を実行すれば《普通の現場》に変身できるのです。」とおっしゃった岡田所長の言葉がとても印象的でした。
その後、現場事務所を後にしマイクロバスにて空港島に渡りました…。
ところどころ埋め立てられた土景色を見ながら真新しい陸橋を渡ると、そこは一つの新しい街を見るような広大な敷地。その中に、膨大な重機と膨大な人数…島の中では、鉄道工事・道路工事・滑走路工事…と見るもの全てのスケールの大きさに目を見張り、改めて2005年開港を間近のものとして実感しました。
沢山の建設施設を見ながら好奇心に胸を膨らませ、周囲の景色に感動しながら空港島の建物の熱源を供給するエネルギーセンター建設現場に到着しました。
現場に到着してまず目に入るのが、地上に構える大型タンク2基と4m近い基礎の上に乗った冷却塔でした。これは4800㎥の冷水と、900㎥の冷温水蓄熱槽であり、各々海水利用の電動冷凍機で製造された4.5℃の冷水を深夜電力を利用して蓄え、冷水熱交換器を介した6℃の冷水を昼間空港の各施設へ送水することになるそうです。片や冷却塔の方は大型の冷凍機用として運用される方式であり、5台の内2台は空港施設を意識した白煙防止対策機との説明をされていました。当日は蓄熱槽の上部まで上って空港島内工事の進み具合を一望のもとに見ることができ、現在の工事状況が予定通りとの説明に展望と共に納得することができました。
エネルギーセンター内へ案内されますと、我々の仲間たちが大型機器の廻りや鉄骨梁の上で大口径の配管を布設している状況で、その間際をぬって電気工事の人達が関連する配線を通す準備に忙しい様子で活気にあふれていました。
地冷プラントの配管基準に適合させる為、様々な検査を繰り返し、場合によっては「何度も手直しになる部分もある」とのお話。最終的には熱供給事業という責任ある事業体の基礎になる部分でもあり、一切の妥協が許されないところだそうです。
冷凍機室からボイラー室へと案内され、更に鉄骨上部の主管部分へと移動すると、そこはすでに耐圧気密試験を終えて断熱工事が始まっていました。工程的に来年の3月より試運転に入るということで結構厳しい状況になりつつあるとの事でした。開港まではまだ一年以上もあるのですが、各施設の事情によって早期に立ち上げる必要があるそうです。
続いて各施設へ繋がっている地域導管が納まっている共同構へ案内してもらいました。エネルギーセンターからPTBまで続いている様子が奥行の深さで十分に感じられ、高所から見た時の施設への繋がりを支えている配管の重要性の説明を真摯に聞くことができました。この仕事はJFEエンジニアリング㈱が受け持たれ施工されているそうです。新菱冷熱工業㈱の工事でもエネルギーセンターから1.2km離れた海水利用施設まで、冷却水配管を地下埋設にて既に布設されたと伺い、遠く霞んでいる施設を指差されて空港島の広さを実感しました。
エネルギーセンターの仕事は、これでも10月で50%を超えた程度で、いま行っている受変電施設の搬入、海水利用施設の大型機器の搬入から廻りの施設工事へ入って行きますが、最終的に来年大型のコージュネを納入するまで、急カーブの出来高になります。配管工事もまだ年内はピーク稼動が続き、追従する形式で断熱塗装と関連する業者さんに無理をお願いすることになるとの事でした。
エネルギーセンターは来年の3月で試運転を迎える予定で一段落するそうですが、これから厳しい冬がまた始まります。現場内での事故は絶対無くすのがモットーと語る岡田所長の力強い言葉を聞き、改めて壮大な一大プロジェクトに従事しているという自信と誇りにただ感服するばかりでありました。ほんとうに今回はご多忙中にも関わらずご協力して頂きありがとうございました。
来年またこの現場がどう変化しているか引き続き「中部新国際空港」の現場レポートを発信できればと思っています。