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2005.06.09
現場レポート

「中部国際空港 エネルギーセンター その後」

昨年10月に訪問して以来、約半年ぶりの「中部国際空港」現場ルポとなります。
この半年の間にどのような変化があったのでしょうか。
中部国際空港エネルギーセンター
前回同様、新菱冷熱工業株式会社 総括所長である岡田孝光氏にご案内していただきました。
4月某日、あいにくこの日は雨天のため、まだ整備されていない空港島内のぬかるんだ道路を渡って取材に向かいました。
現場に到着すると半年前には着手していなかった周囲の建物と、外観では完成しているエネルギーセンターが目に入り、開港に合わせた建物の工事進捗状況の説明を受けました。
外部フェンスで囲まれた敷地内へ入ると前回の訪問時に登った冷水、冷温水蓄熱槽もすっかり化粧が終わり真っ白い巨大タンクになっていました。
その他の外部施設では、前回姿が無かったコージェネレーションシステム4,740kw級が据付けられ、試運転前の最終チェックの状況であり、月末に蒸気タービンが稼動するそうです。ここで発生した2MPaの高圧蒸気をエネルギーセンター内の第2発電所の蒸気タービンターボ冷凍機に送気し、常用の0.8MPaまでの降圧エネルギーを冷水や電気に変換するシステムがあり、この圧力や温度に適合する管材を選定する事は当然ですが、その配管施工は重要管理事項となるそうです。

外部施設を見ながらエネルギーセンター内に案内されると、前回は灰色の印象だった館内も機器、配管の外装が進んで「白」に変わり、仮設の安全施設も撤収され、鉄骨柱の廻りに集積してあった資機材も姿を消した状態で、改めて見渡すと、同じはずのスペースも広くなり倍程に感じられました。中央通路の幅と高さの空間は、設置されている機器類の搬出入計画のためだそうです。

この施設には、中圧ガスを直接引き込み、将来用を含めた蒸気ボイラー群と、屋外のコージェネレーションに供給しています。供給されるインフラでは施設として最終の受け入れになり、ボイラーの試運転に合わせて導入されます。大型の機器についても3月より始まった水張りが順調に進み、試運転計画で予定された時期に順次稼動して能力チェックが行われていきます。「外観としては終わったように見えますが、客先の了解が得られ調整が終了するまでは、まだまだ大変な労力が掛かります。」との事でした。
ポリ管で設置してあった ろ過装置も仮設とは思いましたが、施工された配管の管理が水張りで終わりではなく、管内保有水の水質や配管内表面の防錆処理まで徹底されるとの事です。

冷水・温水主管の圧力管理装置の前では現在、水張りと地域導管の水質管理が行われていましたが、今後は受入先との取引までこの水質管理に相当神経を使うそうです。施設は供給先との連帯意識を持たないと絶対に成立しないとの事でした。

海水利用施設

この施設の特色として海水利用施設があります。伊勢湾に浮かぶ空港島の設置条件を生かし、海水を取水し熱だけを利用する熱交換器を介した冷却水を作り、1.2km離れたエネルギーセンターへ送り込みます。熱利用した海水は空気に触れることなく海へ戻されます。海水の利用系統にはバースクリーン、バケットスクリーン、オートストレーナの順に目開きを細かくして混入物を除去し施設を守りますが、それ以外にも環境に優しい防汚剤を投入して貝などの海生物が繁殖しない様処理されているそうです。自然界のエネルギーを利用する為には大変な気遣いを必要とする事がわかりました。自然を相手にエネルギーを利用するためには不明な事項も多くあり、今後の運転の中で解明されていくことで更なる改善を要求されることも予想されます。バケットスクリーンやオートストレーナで回収されるゴミの状況も一つの事例として検証されていくそうです。

当然の事ながらこのエネルギーセンターにも様々な業者・技術者が携わっています。統率するのが大変なのではとお伺いすると「それぞれの業者・技術者が『当然の事を当然なごとく作業チェックする』ということが大切です。配管作業にしても、末端の管理をいかにするかで仕事が違ってくるのです。」との返答。雇用管理の大切さと技術者の育成が問われる言葉でありました。

この後 各部分ごとに試運転を繰り返し、6月15日までに仮供給を開始し、10月1日から本供給となるそうです。当初の開始予定より3ヶ月程早くなったそうですが、現状を拝見すると今日までの工程がいかに緻密に的確に行われてきたのかが伺えます。「最後のテストを終えても、それで終りというわけではありません。何年後かに、もし何か問題が発生したとしても、問題を追求する責任があるのです。自分のやった仕事に対する責任とはそういうことだと思います。」とおっしゃる所長の姿勢に我々も身の引き締まる思いがしました。

「10月1日には仮オープンできるくらいにはなっていますよ」。平成17年2月17日の開港に向け着実に進化している現場を目の当たりにすることが出来ました。 先回に引き続きご多忙中にもかかわらずご協力していただきました岡田所長に重ねて御礼申し上げます。

さあ、いよいよ新しい空港での離発着が始まります。今回このような取材が出来たことで、新空港を利用する機会があったときには、単なる一利用者というのではなくどこか感慨深く大空へと飛び立つことができるであろうと思います。
(企画委員会記)

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