「最新現場レポート」
今回の現場ルポは、今春、名古屋港ガーデン埠頭にオープンした「イタリア村」を工事中に取材しました。
2月16日 小雨の降る中、当企画委員4名と事務局1名にて建築現場を訪問し、当日は現場の給排水衛生設備工事及び空調換気設備工事に携わる 新日本空調㈱名古屋支店 斉藤俊雄 所長をお訪ねし、ご多忙の中お話をお伺いいたしました。 早速、現場事務所において工事概要の説明を受けました。私たちがまず「イタリア村」と聞いたときに浮かんだのは、ハウステンボスやスペイン村のようなテーマパークが出来るのではないかと想像していましたが、実は1950年代のイタリア・ヴェネツィアの町を再現し、大きく4つのゾーンに分かれる施設内の随所にヴェネツィアンゴンドラ・橋・塔・噴水を配置し、その中にはショッピングモールやレストランが入り、さらに今秋には結婚式場までオープンするという商業施設であるということがわかりました。 空調換気方式についておたずねしたところ、空調方式は、ガスヒーポンプがメインという事で、以下の概算だそうです。
空調機器設備 ◆ガスヒートポンプパッケージ ◆空冷ヒートポンプパッケージ 冷房能力 2592.2kw 冷房能力 824.9kw 暖房能力 3109.5kw 暖房能力 1093.7kw 室内機 188台 室内機 82台 室外機 67台 室外機 59台 換気設備 ◆給気風量 224,110CMH ◆排気風量 229,220CMH 送風機 51台 排風機 69台 換気扇 104台
「このガーデン埠頭のエリアには博物館・水族館・遊園地など様々な施設が既に存在します。その水辺の一辺に新たに魅力あるファミリー向けの施設を建設しようというわけです。」
それは一体どのくらいの規模のどのような施設なのでしょうか。早速、斉藤所長にご案内いただき、現場へと向かいました。
この施設のメイン建築である村を流れる運河の水は、堀川の水を入れて、ろ過し、そして海に戻すのだそうです。その容量はなんと4800tもあるそうです。てっきり海からそのまま海水を引くものだと想像していたのですが、まるで流れるプールのようですね。「この施設の特徴として一番大きいのはこの「運河」だと思います。」「この運河があることにより、排水の勾配がとれず、建屋内は潤勾配で排水管を通し、真空ポンプ方式で排水処理を行う、つまりサイバック方式でなければなりません。」との事。
A棟ゾーンにある棟は旧倉庫を利用したものだそうです。
その既存の建物に耐震工事を行い補強され、外壁をエージング塗装し、古きよき時代のイタリアを感じさせるように仕上げるそうです。「あのように、窓があるように見えますよね?でも、耐震構造のために、あの窓はすべて開かないようになっているのです。実は塗装なんですよ。」なるほど納得です。
空調方式は、天井に露出でぶら下がったガスヒートポンプエアコンが棟内各所に配置されていました。また、棟内の柱やフェンスにはレンガ等イタリアらしさを醸し出す装飾がなされていたのも大いに関心がありました。
2階のテラスから覗いた建築現場は、もう立派な村になっていました。木造で作られた赤いレンガ屋根の戸建の家や運河・鈴鐘塔・・。イタリアらしいとてもカラフルな街並みが出来上がるのが目に浮かびます。
斉藤所長に、この現場ならではの作業や苦労をお伺いしたところ「この現場はイメージが先行する現場だということです。つまり、スタートの時点から工程が決まっているのではなく、進みながら工程を考えていくというところが大きく違います。工期が決まっている中でいかにイメージ通りに着実にすすめていくかという点では、ある意味ほかの現場と違う面白さがあると思うのです。とても楽しんで仕事をさせてもらっていますよ。」とおっしゃる斉藤所長の言葉には、今までの多くの経験や、現場での指導力が備わっているからこその言葉であると感服いたしました。
その後、この構想の開発プロジェクトスタッフの方にもお話を伺うことができました。「我々が企画し始めた当初から『イタリアでいこう』と決めていました。その時点ですでに“ヴェネツィア”や“運河”という構想が浮かんでいたのです。その後なんですよ、イタリアに実際に取材に行ったのは(笑)」その時に撮影したというヴェネツィアの街の風景が、事務所内の壁いっぱいに貼ってあるのがとても印象的でした。「外灯や装飾などもイタリアから出来る限りそのままもってきます。ミュージアムも出来る予定なので、そのなかのヴェネツィアングラスやイタリア小物なども本物を買うことができますよ。」
そしてさらに、日本では3体目という5メートルの「ダビデ像」レプリカも見られるそうです。「ゴンドラも11槽輸入し、ゴンドリアンも呼びますからね」・・・。
どうやら、この名古屋にいながら大陸を渡らずしてイタリア・ヴェネツィア、サンマルコ広場そのままを満喫できそうです。この街並みの中にいると、きっとその風さえもヨーロッパ独特の感覚を味わえることでしょう。
総工費85億円。敷地面積約31,000㎡。駐車台数999台。名古屋港・ガーデン埠頭にまた一つの一大アミューズメントが誕生しました。中部国際空港、愛知・万博とともに、中部地区の活性化に大きく貢献するものになるでしょう。今回、ご多忙中にも関らずこの取材にご協力くださった斉藤所長はじめ開発プロジェクトチームの方々に心より御礼申し上げます。
(IT企画委員 記)